フランス文学者。(1902年2月5日-1995年12月) 福岡県若松町(現・北九州市)生まれ。高松中学校、第三高等学校卒、1926年東京帝国大学文学部仏文科卒、志願兵として一年入隊、27-37年立教大学教授、33年東京商科大学予科教授、44年応召、中国戦線。46年復員。49年一橋大学教授、65年定年退官、名誉教授、青山学院大学教授、72年退職、74年勲三等旭日中綬章。
前稿で、『わたくしは「まごころ」などというものをいまだに信じている古い人間』といったことを書いた。それで、フロベールの「三つの物語」のなかの「まごころ」を思い出した。 「三つの物語」は「まごころ」「聖ジュリアン伝」「ヘロデイアス」の3編を収めるが、後の2編が古い時代をあつかっているのに対し、「まごころ」は現代の話である(といってもフロベールの生きた時代)。原題は「Un coeur simple」 「シンプルな心」だから「「まごころ」というのは意訳に近いのかも知れない。 「半世紀のあいだ、ポン・レヴェックの町の主婦たちはオバン夫人に女中フェリシテのあるのを羨んだ」というのが書き出し。(手許の、山…