本の感想「海とジイ」藤岡陽子(小学館) 瀬戸内海の小さな島に縁のある人たちを描く中編3作を収めている。「海神」「夕凪」「波光」の3作品で、「夕凪」が一番よかった。東京で小さな個人医院を営む医師は70台半ばの年齢になり、誰にも打ち明けていないながらも引退の時期を考えている。ここには看護師と事務員が一人ずついるのだが、ある日突然に一月後に診療所を閉めると告げられる。閉院に向けての支度も進められる中で、医師と看護師の来し方が開示されていく。脳外科が専門だった医師はかつては大学病院に勤務していた。離婚した妻はその後再婚していて遠方で暮らしている。看護師は以前一緒に暮らした男性がいたがずっと前に別れてい…