1900〜1967。
大野晋さんは時枝博士の言語過程説に対してこのやうな評価を下してゐます。
(やはり社会的制約についての考察が欠けている)
近年、時枝誠記と服部四郎による「言語過程説論争」が認知言語学の分野から見直される向きもある。「意味論研究史管見−認知言語学の視点から」(野村益寛)『月刊・言語 30周年記念別冊 日本の言語学』(2002年5月)参照。
時枝の言語過程説は、二十世紀言語思想の広範な文脈のなかで捉えられていい。彼の言う「言語構成観」を、彼と類似する立場から批判した思想家は何人もいる。たとえば、パースの記号学、ウィトゲンシュタインの言語ゲーム論、バフチンのダイアローグの哲学、メルロ=ポンティの言語の現象学、オースティンの言語行為論などは、その範疇に入ると言っていい。(前田英樹=解説 『国語学原論 下』・岩波文庫