ホルヘ・ルイス・ボルヘス(1899-1986)の「バベルの図書館」を巡っては、世界中の読者の想像力を掻き立ててきたことだろう。私もそのひとり。出会いのきっかけは、映画『薔薇の名前』(原作、同タイトル Il nome della rosa ウンベルト・エーコ著 , 1980 )だった 。中世イタリアのベネディクト会修道院で起きた連続殺人事件を、主人公アドソと、師ウィリアムが解明していくというミステリー。俳優陣の名演に引けと取らない、修道院図書室や写字室のリアルな映像に魅入ってしまった。登場人物の一人、盲目の老修道士ホルヘは、ボルヘスの写し鏡であり、修道院の迷宮図書室は「バベルの図書館」をイメージ…