パアル・バック『大地』の訳者新居格はもはや忘れられたジャーナリスト作家、評論家だと思われるが、『日本近代文学大事典』にはほぼ二段、半ページに及ぶ立項が見出される。それを要約すれば、明治二十一年徳島県生まれ、七高、東大政治家卒業後、『読売新聞』『東京朝日新聞』などの記者を経て、文筆生活に入り、文学評論、社会時評、風俗批評に腕をふるう一方で、アナキズム思想家としての活動もあったとされる。そして関係した多くの大正から昭和戦前期のリトルマガジンが挙げられ、それらとパラレルなかたちで、新聞、総合雑誌、婦人誌にも寄稿し、モボ(モダンガール)、モガ(モダンボーイ)の造語者でもあり、次々に評論、随筆集が刊行さ…