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若林城跡

地理

若林城跡

わかばやしじょうあと

 若林城仙台藩伊達政宗晩年の居城(仙台市若林区古城二丁目)。現宮城刑務所敷地若林城跡。東西約400m、南北約320m。見事な土塁と堀に囲まれ(『政宗記』によれば土塁の高さ6m、堀幅54m)、横から矢を射かける(横矢)ための張り出しが北西・北東・南・南西に良好に残り「近世初頭の城郭技術の到達点」とされる(『若林城跡と養種園遺跡仙台市文化財パンフレットの千田嘉博氏の評価)。出入口は東・北・西の三方にあり、内側には土塁をL字形にした内枡形が設けられていた(西側のみ現存)。また、南東隅に隅櫓があったとされる(『東奥老士夜話』)。しかし、内部の遺構については不明であった。

 2005年、宮城刑務所の全面建替えに伴う発掘調査(5次調査)で伊達政宗が晩年に住んでいた御殿の一画が発見された。西大手口(城の西側にある正門)の近くでは前面に白州(砂利敷き)を敷いた大型の礎石建物跡(礎石そのものはないがそれを支えた根固め石を入れた穴が見事に並んでいる)が四棟発見され、一棟は仙台城(青葉城)二の丸の大台所(家政機関の中心施設)に移築された可能性があるという。また、雨落ち溝からは滴水瓦を含む多量の瓦が出土しており瓦葺きの建物であったようである(宮城県遺跡調査成果発表会2005.12 『文化財せんだい№84』仙台市教育委員会文化財課)。

 寛永五年(1628)に完成。政宗は儀式など特別な時以外は仙台城ではなく、若林城で日常を過ごしており、隠居したわけではないので、まさに「大御所政宗の城」である(『仙台市史通史編3近世1』)。寛永十三年(1636)の政宗の死去に伴い、その遺言「堀一重を残し」により廃城となった。その遺言や後の記録によると周辺には城の付属施設があったようである。「屋敷」として幕府の許可を受けたが当時から城と呼ばれており、まわりには家中屋敷が配され、商人町もでき、若林城下町が形成された。仙台城とともに仙台の二つの核の中心となったため、国分氏の拠点を再生した副都心の先駆という評価もある(『仙台藩ものがたり』河北新報社)。若林区の地名発祥の地。

 第5次発掘調査で内部の遺構の保存が良好であることが分かり、まさに江戸時代寛永年間、約10年間のタイムカプセルといえる。この地はこれまでの調査により 古墳(埴輪出土)→平安時代の集落跡→政宗以前の領主国分氏の拠点(あの居酒屋さんがたくさん集まっている「国分町」はこの近くから引っ越した)→政宗の城→薬草栽培する藩最初の「御薬園」→1879年宮城集治監「六角塔」という仙台の歴史の縮図のような遺跡である(仙台市教委の各報告書による)。集治監には西南戦争(1877年)の国事犯を収容したり、刑務所には1948年帝銀事件の平沢貞通が拘置されていたなどのあまり知られていない歴史をも秘めている。

 土塁上には樹木が茂り地域の貴重な緑地景観となっており、刑務所内には政宗が朝鮮から持ち帰ったという梅の木(国指定天然記念物臥龍梅」)が現存し、土井晩翠が命名した横の長さ約30mの仙台市の名木「蟠竜の松」(クロマツ 樹齢330年)もある。

若林城跡─第6・7次発掘調査報告書─』(2007年刊)によれば若林城跡は歴代藩主の城である国史跡仙台城跡に匹敵する価値を有するとして、今後、調査を継続し国史跡指定に向けて努力するとしており、宮城刑務所として困難な条件ながら、戦国武将から初代仙台藩主として生き抜いた「奥州王伊達政宗の城の解明と市民活用が期待される。


文化財せんだい№84」http://www.city.sendai.jp/kyouiku/bunkazai/bunkazai/84/001.html#02

仙台遺跡 http://www.city.sendai.jp/kyouiku/bunkazai/iseki/c0000000131.html

臥龍梅 http://www.pref.miyagi.jp/bunkazai/siteibunkazai/miyagi-no-bunkazai/11TENNEN/kuni/09ume.htm

若林城の謎にせまるhttp://www.stks.city.sendai.jp/citizen/WebPages/wakachu/joho/j001.html

パンフレット http://www.city.sendai.jp/kyouiku/bunkazai/bunkazai/pdf/72/72-3.pdf

仙台市若林城跡の実像」佐藤淳『日本歴史第706号』(吉川弘文館 2007)

報告書

   『若林城跡─第6・7次発掘調査報告書─』仙台市教育委員会 文化財調査報告書第306集 2007

   『若林城跡─第4次発掘調査報告書─』仙台市教育委員会 文化財調査報告書第292集 2005

   『若林城跡─第3次発掘調査報告書─』仙台市教育委員会 文化財調査報告書第256集 2002