桑原武夫『人間素描』(筑摩叢書)を読む。これは桑原の師友のポートレートを集めたエッセイ集だ。「将来この偉大な博士たちを研究するさいの資料になりうるかもしれない。外的些末事と見えることが、学問や芸術の本質と深くかかわりうるというのが私の考えである」と桑原は書いている。本書はまぎれもなく名著だと言える。 30人近くの学者、作家が取り上げられている。主な人物を挙げると、内藤湖南、狩野直喜(君山)、西田幾多郎、柳田国男、萩原朔太郎、川端康成、郭沫若、アラン、ノーマン、貝塚茂樹、織田作之助、中野重治、三好達治、三上章、今西錦司などなど。 君山(狩野直喜)の藤田嗣治評、 昨年久しぶりに帝展へ行ったが、日本…