白檀塗は、ベースを黒に仕上げたのち薄く朱合漆を塗り銀の消粉を蒔いてから、もう一度朱合漆を全体に塗ります。そのあとに、今回は、大変細かく研いで綺麗な表面にして、そこに黒漆でトンボを描いてあります。 最後に艶上げで仕上げています。白檀の後に黒漆でモチーフを描いていることから夜香蒔絵のカテゴリーに立っている様子。 この名称の『秋津』はトンボの古称です。また、秋津島は大和の国の異称です。この作品を近くで見ますと、深い森の中に無数に飛んでいる蜻蛉(とんぼ)を、僅かに差す夕闇の陽にあたっているさまを想起します。白檀塗りを下地にしたことでこの夜香蒔絵は溜塗りベースより明るく、光の当たり具合で立体的に見えます…