純潔教育

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純潔教育

じゅんけつきょういく

自由奔放な性行動を「悪」とみなして戒め、純潔を「徳目」として教えること。具体的には、婚前交渉や不倫や妊娠中絶ポルノを避ける事など。

昭和時代まで、一般の学校教育でも大抵純潔主義に基づいた教育がなされてきた。今でも男女交際を厳しく制限する内容の校則に当時の片鱗を見る事がある。

現在の学校教育ではかなりすたれてきたが、政治運動団体や宗教運動団体の活動を含め、純潔教育を擁護する意見は今なお根強い。

純潔教育の問題点

これまでの日本の純潔教育では、しばしば、女性が貞操を守ることばかりに重きが置かれており、男性の性行動の自制についてはあまり重きが置かれなかったきらいがある。これはダブル・スタンダードであり男女差別だとしばしば非難されてきた。

次に、「純潔教育」=「性に関する正しい知識を子供に教えない」ことになりかねないのでは、という非難もある。実際、純潔教育推進派の中には、現在の学校の性教育で、生殖器の名称を教える事そのものや、人形を使って説明する事そのものが間違っているかのように主張する人も中にはいる。「正しい知識がないと、もっと危険な性行動を起こしたり、性暴力から身を守れなくなってしまう」のではないかという心配は、確かにもっともである。

とは言え、純潔教育標榜する人のすべてが、ここまで極端に情報を隠すことをよしとしているわけではない。大抵は「子供の成長段階に応じて適切な知識を教える」べきだという考えであり、それには体の各部位の名称や生殖の仕組みや性暴力から身を守る方法なども含まれる。しかし、どこまでが「適切」かについては、純潔教育擁護派の間でさえ、意見の相違がある。

また、純潔を極端に重んじるばかりに、自らの若さゆえの過ちや強姦のために私生児を産む事になってしまった女性を白眼視する風潮が生まれてしまう事がしばしばある。すると「世間に恥ずかしいことだから」と、子供を産む代わりに堕胎という方法がとられがちである。このような状況の女性を一方的に非難する代わりに、心のケア育児への協力等こそが大切なのではないかと主張する人もいる。

加えて、「純潔教育」が宗教的・政治的イデオロギーを流布する手段として使われることもある。

「純潔」「真の家庭」「永遠の愛」というスローガンの元、駅前等で「純潔キャンディー」なるものを配布している団体が一番有名であるが、「統一教会が正体を隠して信者獲得の手段として用いている」のではないかと危惧されている。

そして、保守派政治的主張の一環として純潔教育を叫んでいる人も多い。一部の学校で行われている性教育を「過激で危険な性教育」として非難し、純潔教育を推奨すべきだと主張する政治家も一部にいる。

とは言え、「純潔教育」と名の付くものすべてが、特定の宗教団体や政治団体に結び付いているわけではない。日本の純潔教育の歴史として、1947年の「純潔教育の実施について」という文部省社会教育局長通達がよく引き合いに出されるように、かつては一般の学校教育の中で当たり前のように行われてきたものである。また、そのような考えはかつて当たり前のように普及していた。今でも特定の政治宗教思想とは関係なく、また特定組織に属していないが純潔教育を行っている人も実際には多い。

純潔教育に賛同的な団体・個人

純潔教育理念賛同的な(またはそれに近い)団体・個人を掲げる。但し、純潔教育の語を使っているとは限らない。結婚までの禁欲、アブステナンス、自己抑制、生命尊重の性教育など用語は様々である。なお、米国には数多くのキリスト教純潔教育団体がある。

調査データ

社団法人全国高等学校PTA連合会は2003年度から3カ年計画で家庭教育の充実事業委員長=木原雅子京都大学大学院医学研究科助教授)に取り組んだが、最終年度の2005年、高校生とその保護者各々6000人を対象に健全な親子関係の育成に関する大規模調査を行った。その結果は「平成17年度 高校生の心身の健康を育む家庭教育の充実─第3年次事業報告書」としてまとめられた。

調査結果から、高校生の子を持つ親が子供たちの性行動をどう見ているかを知ることができる。それによると、「高校生が性行為をすることをあなたはどう思いますか?」の問いに、父親の58.4%が「よくないと思う」、24.6%が「どちらかと言えばよくないと思う」と答え、母親は前者が74.4%、後者が18.9%と答えている。保護者の8割〜9割は高校生の性行為を容認していないのである。

この結果はただちに純潔教育を支持するものとはならないが、「責任ある大人になるまで性行為を控えた方がいい」という大半の親たちの考え方は、純潔教育が目指す方向性と一致すると言ってよい。少なくとも親たちは、「子供には性交するしないを自分で決める権利がある」とか「セックスは子供の自由だから、避妊性感染症対策など科学的知識を教えるべき」といった性教育推進派の主張を支持していない。

なお、文科省中央教育審議会専門部会は、「性教育を行う場合に、安易に具体的な避妊方法の指導に走るべきではない」「子どもの性行為は適切ではない」という指針を打ち出している。(2005年7月17日「すべての子どもたちが身に付けているべきミニマムとは?」

文科省の教育御意見箱

2005年に国会性教育の行き過ぎやジェンダーフリーが問題とされ、中山成彬文科相の指示で「教育御意見箱」が設置された(3月18日〜5月30日)。全国から多数の意見が寄せられたにもかかわらず、同時期に行われた自民党の「過激な性教育ジェンダーフリー教育実態調査プロジェクトチーム」の調査にばかり注目が集まり、同省の集計結果がメディアで報じられることはなかった。また文科省が同省HP上で公表した結果は、意見を羅列しただけのおざなりなもので、それぞれの意見の件数や比率は示されなかった。

その後、文科省生涯学習政策局政策課への情報公開請求により「教育御意見箱」の結果内訳」が明らかになった。それによると、意見総数は1973件で、「性教育関連」は904件(延べ1108件)、「男女平等教育」は365件。

性教育に関しては、その行き過ぎに反対し是正を求めるもの、児童の発達段階に即して保護者の理解を得て行うよう求めるもの、自己抑制を教えるべき、過激な教科書を改善すべき、など性教育の行き過ぎを批判する意見が圧倒的に多かった。



アメリカにおける、純潔教育の効果をめぐる論争

コロンビア大学のピーター・ベアマン (Peter Bearman)が中心となり、17の政府機関が協力し万人以上の若者の面接調査を行った「若者の健康と性行動に関する調査」を基に、同教授は「純潔の誓い」を立てた若者のほうがリスクの高い性行動に走りやすいなどの結論を2005年に出した。

これに対し、ヘリテージ財団研究者は同じ資料の分析によって「効果がある」という主張を行い、どちらが統計的に信頼できるかで論争が起きた。