白岩英樹*1「書物復権によせて」『書物復権 共同復刊』28、p.2 「復権」の前提には「失権」があるという。書物の「失権」は「版元」側からは「品切れ」と表現される。 いうまでもなく、我々は往々にして道を誤る。本来ならば十全に関心を向けられて然るべきであった他者を、座視して遣り過ごし、彼らが「失権」して初めて、自らの無知と無関心を恥じる。そして、悔悟しつう気づくのだ。権利を失ったのは彼らだけではない。世に二つとない彼らの声を喪失することで、我々もまた、同じ人類として「失権」したのだと。 それでも、彼岸へ渡ったのちに「復権」を果たす例もまれに存在する。律法学者の嫉妬を買って磔刑に処せられたキリスト…