歓楽の生活をなげうち,真実の恋に生きようとする娼婦マルグリットと純情の青年アルマンの悲恋の物語.何ものにも代え難いその恋さえ恋人の前途のため諦めて淋しく死んでゆくマルグリットに作者は惜しみない同情の涙を注ぐ.汚土の中からも愛の浄化により光明の彼岸に達し得るもののあることを描き,劇にオペラに一世を風靡した――. ドゥミ・モンド(裏社交界)に生きる高級娼婦マルグリットの通り名「椿姫」は,月の25日は白椿,残り5日は赤椿を身につけたことに由来した.赤椿を付している間は,客を取ることができない.放蕩三昧の旦那は,デュマ・フィス(Alexandre Dumas)の実父アレクサンドル・デュマ(Dumas,…