青山学院高等部在学中の2004年、「乱反射」50首にて第50回角川短歌賞を最年少で受賞。本名横井直子。母親は歌人の小島ゆかり。(以上は日本経済新聞、朝日新聞紙面、青山学院のウェブサイトより引用しました)
「一首鑑賞」の注意書きです。 yuifall.hatenablog.com 82.思うひとなければ雪はこんなにも空のとおくを見せて降るんだ (小島なお) 砂子屋書房「一首鑑賞」で染野太朗が紹介していた歌です。 sunagoya.com 最初はただ単に「言葉が綺麗な歌だなー」くらいのノリでクリックして、紹介文に 「短歌研究」の「あたらしい相聞歌をさがして」という特集に寄せられた10首連作の1首目。 とあって、今度はどのへんが「あたらしい相聞歌」なんだろう?って目で読み返しました。まずそもそも「思うひとなければ」なんだから、今は恋をしていない状態なわけです。相聞歌として考えると、逆に、「思うひと」…
「一首鑑賞」の注意書きです。 yuifall.hatenablog.com 47.死後の世界はないと唱えしホーキング博士は死にて車椅子残る (小島なお) 砂子屋書房「一首鑑賞」で吉田隼人が紹介していた歌です。 sunagoya.com これ面白いですね。我々は今、ホーキング博士の「死後の世界」を生きているというわけです。解説に 死後の世界とは敢えて言えば「わたし」、この場合ではホーキング博士にとっては存在せず、ただ遺された者たちにだけ存在するものなのではないか。車椅子の残ったこの世界は、博士以外にも無数の人びとの「死後」の時間が流れる、死後の世界だと言えなくはなかろうか。 とあります。わたしが…
左右社 出版 山田航編著 「桜前線開架宣言 Born after 1970 現代短歌日本代表」 感想の注意書きです。 yuifall.hatenablog.com 小島なお② 後半は高校生ではなくなっていて、 十代にもどることはもうできないがもどらなくていい 濃い夏の影 パソコンで業務フロー図描いているわが胸のうちの枝のぐにゃぐにゃ という作品もあります。 「十代にもどらなくていい」っていう感性は、20代前半かなぁ。言わせてもらえばまだ十分青春じゃよ…。というか高校より大学のが楽しいじゃん?女子高生の世界よりも大学生の世界の方が好きだし。高校生って子供だもん。十代になんて戻りたくないよ…。 そ…
左右社 出版 山田航編著 「桜前線開架宣言 Born after 1970 現代短歌日本代表」 感想の注意書きです。 yuifall.hatenablog.com 小島なお この人の歌がすごいなって思うのは、加藤千恵とか野口あや子と違って「ごく普通」の女の子の日常が詩になってるってことです。青春の歌なのに、自意識が過剰じゃないんだよね。漫画っぽくなくて、リアルっぽいの。そこにいる女の子って感じ。 噴水に乱反射する光ありまだ性愛を知らないわたし って言える潔さすごいよなぁ。高校生までのセックスにはちょっと、何て言うか(現代日本において、ですけど)酒、煙草、ピアスと同じ嗜好品としての空気感がありま…
書肆侃侃房 出版 東直子・佐藤弓生・千葉聡編著 「短歌タイムカプセル」 感想の注意書きです。 yuifall.hatenablog.com 小島なお なにもないこともないけどなにもない或る水彩画のような一日 この人の歌は若々しい透明感に溢れていて瑞々しいですね。こんなに若々しくて明るいのに詩になっちゃうところがすごい才能ですね。次ページの小島ゆかりの娘さんのようです。「倫理の先生」「エタノールの化学式」「先生の白衣」「歴史」「十八歳のわれ」とあって、高校生かー、と眩しくなりました。 声もたぬ樹ならばもっときみのこと想うだろうか葉を繁らせて という歌もありますが、20首の中に相聞歌が2首しかなく…
気温が下がって、居間にはエアコンの暖房を入れ、掘り炬燵のヒーターもしっかりオンにしている。 何が原因かはわからないが昨夜から顔の赤みが強くなった。昨夜入浴した後、鏡に映る顔が赤くなっているのに驚いた。昨夜は眠くなり、薬をつけずに眠ったが今朝、顔を見ると昨夜ほどではないが赤みが残っている。髪の生え際が特に赤く、唇の端(口角)も小さくだが赤く腫れている。 ひさしぶりに軟膏を顔の赤みのあるところに軟膏を塗った。赤みがでるのはほぼストレスが原因である。なににストレスを感じたのだろう。 今夜は新宿の住友三角ビルで朝日カルチャーの歌会があり、参加するつもりだ。はじめての歌会で、はじめて会う方たちとの歌会だ…
雨や雪、曇天から解放されて、朝から晴れて陽ざしがたっぷり。気温は低くて、いつもより強めの暖房がほしい一日だった。 午前中、友だちに電話を用件があり電話したが出なかった。別の友だちには咲いた水耕栽培のヒヤシンスの画像をラインで送った。球根をくれたのは友だちなので、無事に咲いたよ、ありがとうの気持ちをこめて。 ヒヤシンスの花をめぐるやりとりを何回かして、咲き終わった球根をどうするかと言う話になり、友だちはマンションに住んでいるので土がなく、球根は捨てるしかないと言う話になった。わたしは植木鉢か庭に埋めるつもりと伝えた。 友だちの家で咲き終わった球根をわが家で引き取れないよねとそれとなく打診をしてき…
これから思い出すかもだから、増やします 出典わからないものがあって、知っている方がおりましたら教えてください◯綺麗だと思う。美しさと不穏さは紙一重であると感じる1. 嵐吹く三室の山のもみぢ葉は龍田の川の錦なりけり/能因法師 小学校で習った。川が錦って、すご! と思った。2. ガンジスは動詞の川ぞ歯を磨く体を洗う洗濯をする/俵万智『チョコレート革命』 中学校で読んだ。川が動詞!? すご! と思った。3. 瓶にさす藤の花ぶさみじかければたたみの上にとどかざりけり/正岡子規 マグリットの絵みたいなのが思い浮かんだ。4. ペダルを踏んでわたしを持ち上げるあいだ美容師がふと見る窓の外/福山ろか『眼鏡のふ…
はじめに こんにちは、篠田葉子といいます。歌人です。 階田発春さんの記事「好きな短歌100首言えるかな(超短評つき)」を読み、面白かったのでやってみました。 階田さんの記事はこちら↓ note.com 学生時代に短歌を始め、社会人になってから少しのブランクを挟んでまた戻ってきました。筆名は変わっていませんが覚えてくれている方はいるでしょうか。 覚えている方は再びよろしくお願いします。覚えていない方、知らなかった方もどうぞよろしくお願いします。 前置きはほどほどにしていってみよう。作者五十音順、敬称略です。 あと簡単にその歌のすきなところを書いてます。 浅野大輝 幻みたいでもうれしいよ 遮れる日…
11/ 12 (日)14:00〜15:30『現代短歌パスポート2』(書肆侃侃房) 刊行記念 伊舎堂仁 × 小島なお × 谷川由里子トークイベント ABC本店 【11/ 12 (日)】『現代短歌パスポート2』(書肆侃侃房) 刊行記念<br>伊舎堂仁 × 小島なお × 谷川由里子トークイベントaoyamabc.jp 現代短歌パスポート2 恐竜の不在号 作者:岡野大嗣,川野芽生,大森静佳,小島なお,谷川由里子,寺井奈緒美,我妻俊樹,北山あさひ,伊舎堂仁,安田茜 書肆侃侃房 Amazon
朝日が輝いているとトイレ掃除をしたくなる。午後からの合気道の稽古に備えてて朝からまずトイレをピカピカンに磨いて床掃除をした。 <この人は誰かと見てる瞳孔に吾が映りて首かしげる母(豊後高田市 榎本孝)> <堰(せき)あれば多摩川の水たゆたひて中洲の石の白く定まる(多摩市 豊間根則道)>⇒ 佐々木幸綱撰: 榎本さんは認知症の母を詠った。私の母も81歳ころには息子の私をわからなくなっていたと思う。故郷を訪ねていっても「嬉しそうではなかった」のだ。こういう歌も詠めるんだね。 豊間根さんの多摩川を詠んだ歌はうつくしい。叙景歌っていうのかな? <猛暑日を助けてくれたそうめんに別れを告げて作るボンゴレ(五所…
先日、山崎聡子の既刊歌集『てのひらの花火』『青い舌』の両方を読み終えた。第一歌集から第二歌集にかけて、とても正統な進化を遂げた歌人だと感じた。 絵の具くさい友のあたまを抱くときにわたしにもっとも遠いよ死後は/『てのひらの花火』 クレヨンに似た匂いする髪の毛をわたしももっていたのよ、真昼/『青い舌』 忠魂碑 きれいな釦つけたシャツ着てはほほ笑む戦死者のこと/『てのひらの花火』 青い舌みせあいわらう八月の夜コンビニの前 ダイアナ忌/『青い舌』 喉鳴らすような地声の母親がぼろんぼろんとこぼす線香/『てのひらの花火』 夢にみる母は若くてキッチンにバージニアスリムの煙がにおう/『青い舌』 電車って燃えつ…
先日、小島なおの第三歌集『展開図』を読み終えた。そのなかで、とりわけ印象的だった連作を2つ取り上げる。 「流氷」 祖父との死別を描いた連作。 命終わる白いベッドに集まれる家族は古い帆船として 古い帆船、という把握にどこかあたたかみを感じる。帆船は風をうけて進むが、風はどこからくる風か。 いくたびも外れてしまう呼吸器を祖父のちいさい顔に戻せり くるしむ祖父の様子がつたわってくる。ひとは死にちかづくと、しぼんでちいさくなっていってしまう。 いま祖父は流氷となり離れゆく見えなくなるまで見つめていたり 表題歌。流氷はのったりとした速度で遠くへと向かっていく。見えなくなるまで見つめたのは、”そうしてあげ…
今週末は、短歌研究のバックナンバーを読みすすめた。おもしろかった企画・連作についていくつか言及します。 座談会「現代短歌史と私たち」 「短歌研究」2021年11月号 大森 (前略)自分で歌を作っているときの実感からして、口語で、特に新仮名の口語で怒りとか、ごつごつしたところ、一首の前に思索があるんじゃなくて一首の中で思索するようなことを、そういう苦しさみたいなのを出していくのは、すごく難しいということを最近感じているんです。 たしかになあ、と思った。口語短歌でストレートに怒りを詠んで、かつそれで成功している歌人ってほとんど見ない気がする。それこそ染野太朗ぐらい?(斉藤斎藤もいちおう当てはまりそ…
「両手をあげて、夏へ」は、2021年8月号の短歌研究に掲載された100首連作。章立てなどはなく、100首の歌が区切れなくそのまま並べられている。 小島の既発表作のなかでは比較的読み解くのに苦労するが、小島なおという歌人へのイメージの塗り替えを迫るような歌も多くあり、最後まで退屈せず読むことができる。 連作全体のテーマ、とまで言っていいのかはわからないが、「子どもをもてない(もたない)こと」は、この連作における大きな主題のひとつになっているように思う。関連しそうな歌を中心に引いていく。 産むという魚にもできることできず突風を踏み踏んで歩めり 「魚にもできることできず」という把握のしかたに胸がくる…
・週末に歌壇賞と角川短歌賞のバックナンバーを図書館で読んだ。歌壇賞については、平岡直子や服部真里子、川野芽生を除いて、(自分の不勉強で)名前も作風も知らない人ばかりだったので、ああ〜こんな人たちがいるんだなあと勉強になった。印象に残ったのは帷子つらね『ハイドランジア』。こういういい作品をつくる人がちゃんと評価されるんだなとわかって、歌壇賞への信頼感がつよくなった。 ・あと、平岡直子が受賞したときのバックナンバーも読んだけど、東直子が平岡の作品についてめちゃくちゃ解像度高く読み込めてて驚いた。東については、作風からふわふわした感じの人なのかな〜と思っていたから、自分の先入観がかなり覆された。もっ…
一花ごとにある時間軸 木槿から木槿の時差を渡ってあるく 小島なお 『展開図』「切り株」P137 木槿は早朝咲いて、夕方ごろにしぼんでいく一日花。次々と別の花が咲くので花期を長く楽しめますが、ひとつの花ごとの美しい時間はわずか一日。儚い花です。 この歌では、ゆっくりと木槿の花のひとつひとつを見ているようです。「一花ごとにある時間軸」は人間というより、ちょっと昆虫めいた視点かも、と思います。 昆虫がひとつひとつの花を飛んで移動するとき、その一花ごとに違う時間がある、と感じるのではないでしょうか。 ひとつひとつの花に用がある生きものの視点だと思うのです。 人間の視点をもっともっと小さくしていくと、他…
まだ染めぬ 黒髪香る 妹は 首のうぶ毛を そよがせて寝る 小島なお 姉の目線に宿る優しさがあたたかい一首。字面を追いながら、いろんな情景が脳裏に立った。かつての職場の同僚が連れてきていた幼い女の子の眠そうな顔。今はもういない祖母の家で夏休みに昼寝の途中でふと自分だけ目を覚ました時のあの静かさ。家族っていいな。結婚願望は強くない方だけど、こういう詩を読むと家族が欲しくなる。 映画にもなっているみたいです。
瀬戸夏子 著(2021) はつなつみずうみ分光器 : after 2000現代短歌クロニクル (左右社): 2021|書誌詳細|国立国会図書館サーチ 今の時代の短歌ってどんなん、って知りたいなあと、先日このPodcastを聞いた。 これは『はつなつみずうみ分光器』をもとに、短歌を音読して、短歌に詳しくない人からのコメントがあり、作者の瀬戸さんからの解説が入る、みたいな番組。最後に川野さんの歌が紹介されて驚き嬉しかったのだが、「なんかもっと詳しく話してくれないんか!?」という印象だった。他の歌人の紹介が褒め調つよめだったからかなあ。まあポッドキャストの中の数分で話し切れるような分量の解説にはなら…
雨降れば雨の向こうという場所が生まれるようにひとと出会えり 小島なお 『展開図』「4✕10」P142 今年は少し早い梅雨入り。出かけるには面倒なところもありますが、雨の日の静かな雰囲気はわりと好きです。 「雨降れば雨の向こうという場所」ができる。雨が降る土地と、降っていない土地。その時の天候で、場所の性質が分かれてしまう。 「ひとと出会えり」の比喩として使われることで、他者という異質なものとの出会いや関わりは、雨が降る地とそうでない向こうの場所との接点とも言えます。 「向こう」の景色、温度、雰囲気。異質なものと接することで自分のことが見えてきます。 もちろんこちらと「向こう」の違いゆえに摩擦や…