松本歯科大学病院の杉野凛太郎さん。今年、歯科医師国家試験に合格し、研修医として働く(右) 風がまだ冷たい4月上旬。長野県塩尻市の松本歯科大で、新人歯科医師の杉野凜太郎さん(28)は臨床研修のオリエンテーションに参加した。講師の姿を真剣な表情で見つめつつ、話した内容は同席する手話通訳士の手の動きで理解する。 生まれつき重度の難聴で、音のない世界に生きてきた。今年3月、6年間の大学での勉強を終え、歯科医師国家試験に合格。重度難聴の歯科医師は「全国でも聞いたことがない」(同大)という。 患者や同僚とコミュニケーションをとる場面も多くなる。「『聞こえない歯科医師』という自分のスタイルを追求したい」と意…