思えば、私は子供の頃から、よく何かに追いかけられていた。 それは人そのものであったり、人の声であったり、視線、噂、不安、死、罪、とにかくありとあらゆる何かだった。「お母さん、何か怖いのがくる」 私はそれらをうまく形容できなくて、何か、とか、怖いもの、としか説明できなかった。母はそういうとき、ただ何度も、大丈夫だと繰り返してくれる。「大丈夫よ、何もないわ。私たちが感知しなければ、何もないのと同じなのよ」(上畠菜緒『しゃもぬまの島』集英社、2020) こんばんは。今日は3月3日です。桃の節句です。ひな祭りです。とはいえ、臨時休校ゆえ、ひな祭りにちなんだスピーチをする女の子も、桃の節句と聞いてニヤニ…