西陣、上立売通浄福寺東入ルの雨宝院の南門を入って左傍らに植わる御衣黄を今年は見ることが出来ない、ばかりでなく来年も目にすることが出来ない。門の内の柱に「御衣黄桜は残念ながら枯れてしまいました。」と書いた白い紙が貼ってある。塀越しにも見ることが出来たその木は、やや薄黒くなった裸の枝を中空に晒しているだけである。去年色が染まる前の葉を急に落しはじめたのだという。改めて枝を見上げれば胸を突かれる。原因は分からない。病気であるか、老いたのか。御衣黄は去年の猛暑をやり過ごし、地中に張った根が水を吸わなくなった。吸えなくなったのか、自ら吸うのを止めたのか。木が水を吸わなくなるというのはどういうことなのであ…