国文学者。1967年生まれ。同志社大学文学部教授。 お茶の水女子大学文教育学部国文学科卒業、同大学院博士課程人間文化研究科比較文化学専攻単位取得。 お茶の水女子大学助手、十文字学園女子大学助教授をへて現職。博士(人文科学)。 著書に『梁塵秘抄とその周縁―今様と和歌・説話・物語の交流』(三省堂、2001年。志田延義賞受賞)ほか。
植木朝子さんの論文「白拍子の芸能―歌詞と旋律の間、身体と装いの間―」(「国語と国文学」3月号)を読みました。白拍子とは、平安末期から中世にかけて貴族社会で大流行した歌謡(音曲・舞およびそのリズムをも言い、それを得意芸とした芸能者=遊女をも言う)ですが、植木さんはその歌詞自体にも、歌詞と旋律、舞の構成、芸能者の身体と装い(異性装)にも、相反する要素が同時に含まれていることに注目しました。 最初に、興福寺の延年で稚児が舞う白拍子について記録した『今様の書』(仁和寺蔵)所収の歌詞を、同名の曲が多い早歌と比較して、その共通性と相異とを考察しています。両者とも祝意が濃厚で、物尽くしの形式が多いが、前者が…