北添道場では新年になったら「餅つき」をやる。そして頑張った門弟を一人選んで、刀の手入れ用具を授与する。餅つきの道具は数馬が古道具屋で購入した。あらかじめ門弟たちには各自一合の餅米を持ってきてもらい、数馬が準備する。そして、門弟たちに餅をついてもらうのだ。 北添道場の恒例行事は、この餅つきだけである。あとは門弟の思い付きで、物見遊山に出掛けることがある。 さて、もち米が蒸しあがり、門弟も揃った。臼に餅米を入れて、門弟が、「よいしょ! よいしょ!」と声をかけて杵でつく。「合いの手」は数馬がやる。いろんな人物が手を入れるのはあまり良くないだろうから。年に一度だが、門弟たちとの共同作業を数馬は大切にし…