1982年3月、ドメス出版から刊行された長谷川時雨(1879~1941)の評伝。編者は長谷川仁と紅野敏郎。カバーは長谷川春子(1895~1967)。 私を生むと間もなく病死した生母に代わり、生まれ落ちるより一人前の大人になるまで私を薫育し、明治、大正、昭和の三代に渡ってその多彩な生涯を生きた長谷川時雨の歩んだ道を、長谷川家を継ぐ者として語り伝えておかねばならぬと思い、私筆を走らせた次第である。ほかに画家であり、毒舌家と言われて一生を独身で通した、時雨の末妹春子の随筆も附け加えさせて貰った。 時雨の幼き頃のあだなアンポンタン(安木丹)とは、江戸時代の流行語で愚か者をののしって言う言葉である。 ま…