旅のボヘミアン(1861年版) シャルル・ボードレール/平岡公彦訳 熾烈に瞳を燃え立たせた予言者たちの部族は、 昨日旅路についた。一行の女たちはてんでに 小さな子をおぶったり、その見上げた食欲に、 垂らした乳に常備した宝を委ねたりしていた。 彼女らが身を寄せあって乗る荷馬車のそばで、 担いだ武器を光らせて、徒歩で行く男たちは、 不在のキマイラたちへの陰鬱な愛惜のせいで、 動きの鈍くなった眼に、空を散歩させていた。 砂に覆われた小部屋の奥に潜む、コオロギが、 彼らが通るのを見るなり、歌声を倍にすれば、 彼らを愛するキュベレーは、緑を広がらせて、 岩場に川を流れさせて、砂漠に花を咲かせて、 この旅…