方舟さくら丸 (新潮文庫)作者:公房, 安部新潮社Amazon 安部公房の小説。第一印象だけで言うならば、やや読むのが苦痛な小説ではあった。あまり必要性の無い冗長なシーンが多かったように感じた。 しかし最後まで読み通すことで、相応の深みや重みを感じた。人間の実に嫌な面。そして結末に向けて集約されていく因縁。そういったものを描いて印象深い小説だった。 「もぐら」を自称する男は、採石場の跡地である洞窟を核戦争から生き延びるための「方舟」と称し、シェルター化している。 方舟の乗組員としてデパートの見本市で出会った「昆虫屋」、その「サクラ」と連れの「女」を(半ば偶然的な形で)勧誘するところから物語は始…