翻訳家。映画評論家。1906年(明治39年)生まれ。1988年(昭和63年)没。 映画字幕翻訳を、2000本近く手がけた、第一人者であった。 弟子に、戸田奈津子、細川直子がいる。 小説の翻訳も多く手がけており、特に有名なのは、レイモンド・チャンドラー作品の翻訳で、主人公フィリップ・マーロウの名台詞など見事に日本語に置き換え、名訳として長く愛されている。その一方、原文を端折って訳した部分が多くあることなどに対して、原文に忠実でないという指摘もある。
映画字幕(スーパー)五十年 (ハヤカワ文庫NF)
映画字幕(スーパー)の作り方教えます (文春文庫)
映画字幕は翻訳ではない
きのう息子がデザートの甘夏をわけてくれなかった。食いもののうらみはおそろしいyo! *** さておき、菊池寛ばなしのつづき。 krokovski1868.hatenablog.com 菊池寛記念館で古本まつりをしていたので妻子とともにでかけてきた。たまたまNHK高松の収録がおこなわれていたうえ、とちゅうで息子がシャウトしたため、長居はできず。 入館料200円で15冊までもちかえりOKという大盤振舞いだったのに、もちかえったのは2冊のみ。ハヤカワ・ミステリのミッキー・スピレイン、清水俊二訳と田中小実昌訳。 出張のときに電車のなかで読もう。以上、連絡おわり。
綴方ばなしの拾遺。 krokovski1868.hatenablog.com レイモンド・チャンドラーの作品にはときどき街とその生活者の描写がはいって、それが独特の雰囲気をあたえている。そのせい、というわけでもないのだろうが、自分でも似たようなことをしていたのに、さいきんになって気がついた。 チャンドラーの翻訳について、ひらがなに傍点をうつのは清水訳の特徴といっていい。これは原文のイタリックとは無関係で―イタリックはむしろスペイン語につかわれる―、紙面ぜんたいの白っぽさがたりないとき、またはひらがながふえすぎているときに傍点で調節しているようにみえる。ブログ内で傍点がつかえるかどうかについては…
「新潮」の浅田彰インタビューに心躍らせる 新潮 2024年02月号 新潮社 Amazon 新しい年(ねん)がはじまって、殊勝に文芸誌などを開いてみると、浅田彰がインタビューを受けていて、さすが新潮は新潮だな、とおもうものがあるのだった。ニューアカといえば、今はもう、島田雅彦、とならないところがある。今の文学のシーン、というとシーンなどというものがはたしてあるのか、という話になるが、それでも距離感のようなものが感じられる――われわれはもう島田雅彦の問題圏から、遠く離れているのではなかったか。じっさい、彼自身もそれは自覚をしていて、自覚はしているのだけれども「徒然王子」とかあの辺のラインは島田はま…
レイモンド・チャンドラーはストーリー・テリングに優れた作家とは思わないが、読者の情感にさざなみを寄せることには巧みで、その最たるものとして遺作『プレイバック』のあの人口に膾炙したやりとりがある。いまさら引用するのもはずかしくなるほどよく知られた会話だが英文法の仮定法過去の勉強にもなるので書きとめておこう。 "How can such a hard man be so gentle?" "If I was't hard, I wouldn't be alive, If I couldn't ever be gentle, I wouldn't deserve to be alive." 「あなた…
こんにちは。猫がかわいい映画を見ると、猫ばかり見てしまって人間はそっちのけになるサトーです。さいきん見た映画の感想です。 ストーリー ロング・グッドバイ エリオット・グールド Amazon 私立探偵をしているマーロウは猫と暮らしています。そんなマーロウのもとに、友人ハリーがやってきました。 ハリーは、メキシコに行くから国境まで車で送ってほしいとマーロウに頼みます。 すると翌日、刑事が2人やってきて、ハリーの妻が殺されたからハリーの行き先を言えとマーロウに迫ります。 友人を守るため、行き先を言わなかったマーロウは逮捕されてしまいます。 ハリーは妻を殺したのか? そしてマーロウは留置所から出られる…
クエンティン・タランティーノ『その昔、ハリウッドで』(文藝春秋)を読んでいる。映画のノヴェライゼーションとのことだが、スクリーンにはなかった映画談義がどどーんとぶち込まれていて、楽しさ満載、ずいぶんとお得感がある。田口俊樹氏の訳筆も大いに作用して作者のキラキラした才能を感じているうちにグイグイと頁が進む。 ところで本書のカヴァーに著者と訳者田口俊樹氏の紹介があり、後者に驚いた。なんと訳書のトップにレイモンド・チャンドラー『長い別れ』とあるではないか。調べてみると昨年四月に上梓されている。不覚にもこれまで知らず、チャンドラーのファンであるわたしにとっては事件である。ようやく創元推理文庫でもThe…
所有する本の体積が、本棚の収容可能体積を大幅に超過している。 有り体に言えば、本が本棚に入りきらない。 積読 最近、考えなしに(金銭的な考えも収納スペース的な考えも私にはなかった)本を買いすぎていたため、本棚に本が入らなくなってしまった。 仕方がないので、できる限りの収納をしたうえで、直近読もうと思っている本たちを机の上に平積みしている。いわゆる「積読」つんどくだ。 どう見ても10冊以上あるし、めちゃくちゃ難しくて分厚い専門書も紛れ込んでいて、これを書いている視界の端に映っているが、それだけで少しドキドキする。 積読を肯定する某コロの記事は、自分の心の中でかなりのヒットだった。 積読している本…
私の読むジャンルのひとつにハードボイルド小説があり、先月「黒い瞳のブロンド」(ベンジャミン・ブラック(ジョン・バンヴィルの別名義):著、小鷹信光:訳 早川書房)を原作に映画「探偵マーロウ」を観てきましたので感想を今週は投稿したいと思います。 マーロウ関連は読んだつもりでいたのですが、こちらは映画化にあたり初めて知りました。 左が原作本の「黒い瞳のブロンド」右が「長いお別れ」(村上春樹:訳・早川書房) ハードボイルド小説の登場人物で有名なフィリップ・マーロウ。本家はアメリカの作家レイモンド・チャンドラー(1888~1959)が創作した探偵で、この作品はそのマーロウを借用して書いたいわばパスティー…
シミルボン投稿日 2021.09.04 (シミルボンのお題「この「ひとこと」だけで読む価値がある!」に「字幕とミステリ(チャンドラー、ボガート、ボーセージ)」というタイトルで投稿したもの) 映画字幕(スーパー)五十年 (ハヤカワ文庫NF) 作者:清水 俊二 早川書房 Amazon チャンドラーの名訳者、としても知られる清水俊二さん。私も『長いお別れ』の名調子に酔ったものだ。もちろん沢山の映画字幕でもお馴染みの名前だった。だが最近は R・チャンドラーの「長いお別れ」をいかに楽しむか 作者:山本光伸 柏艪舎 Amazon 3冊の「ロング・グッドバイ」を読む―レイモンド・チャンドラー、清水俊二、村上…
8月13日の競馬の結果 中央新潟「関屋記念」…馬連1,800円的中(15点) 1着 2番アヴェラーレ(5番人気)▲ 2着 1番ディヴィーナ(2番人気)〇 3着 16番ラインベック(6番人気)△ ディヴィーナとロータスランド、どちらを本命にするか迷ったのですが、ディヴィーナがあまりに小柄で、内で揉まれた場合が怖いこと、7、8枠の実績と先行優位なことからロータスランドを本命にしました。ディヴィーナを三連複の軸にしていれば7,990円か…。勝ったアヴェラーレは確かに左回りは手堅いですが、詰めが甘く、なかなか勝ちに至らなかったのも事実。▲でしたが半信半疑な面もありました。ロータスランドは12着。敗因は…
シミルボン投稿日 2020.08.22 3冊の「ロング・グッドバイ」を読む―レイモンド・チャンドラー、清水俊二、村上春樹― (ソリックブックス) 作者:松原元信 ソリック Amazon この本は、普通のサラリーマンだった著者が退職後の2007年夏に偶然手にとった村上訳『ロング・グッドバイ』への違和感から、原文、清水訳と比較しながらあれこれトリビアを語るエッセイ。著者直筆のスケッチが楽しい。(以降「松原版」) R・チャンドラーの「長いお別れ」をいかに楽しむか 作者:山本光伸 柏艪舎 Amazon こちらはミステリ翻訳に定評ある著者が、原文と前出の二冊の邦訳を比較し、自分の試訳もぶつけた本。清水、…
『短編ミステリの二百年2』チャンドラー、アリンガム他/小森収編/猪俣美江子他訳(創元推理文庫)★★★☆☆「挑戦」バッド・シュールバーグ/門野集訳(The Dare,Budd Schulberg,1949)★★★☆☆ ――ポールは海を見つめていた。モーターボートと水上スキーの娘が衝突ぎりぎりまで突っ込みどこまで突堤に近づけるかくり返し挑んでいた。「ああ、ジェリー・ローフォードか。あの娘はいかれてるのさ。家族が金持ちで、自分でも絵を描いたりカジノで大勝ちして金を儲けた」。ポールがクラブに行くと、ジェーンが男とカジノに行き、酒を飲んでいた。「お酒はもういいわ。誰か泳ぎたいひと?」。連れの男が断るなか…
6/1(木) 私たちは人びとと親密になると、これは一生の結びつきになると考える、それが突然、一夜にしてその人びとが視界からも記憶からも消えてしまう、これは本当だ、と安楽椅子のうえで私は考えた。 (トーマス・ベルンハルト『樵る 激情』初見基訳 河出書房新社 p56) 6/2(金) 通所117日目。 6/2(金) 愛の応答を求めての呼びかけではない、もはやそのような呼びかけではなく、おさえてもおさえきれぬ声のほとばしり、それがおまえの叫びの本性であれ。 (リルケ『ドゥイノの悲歌 改版』手塚富雄訳 岩波文庫 p53) 幸福とはまぢかに迫りつつある損失の性急な先触れにすぎないのだ。 (p69) 内側へ…
曇り、25度。 7時に起きる。 朝餉は、蜂蜜とヨーグルトをかけたバナナ、レタス・キャベツ・玉葱・大豆煮・チーズ・カニカマ・バジルのサラダ、バタートースト、アールグレイ。 カフェスタイルのエプロンを妻がプレゼントしてくれる。料理を愉しめということらしいが、そのように解釈されるのは本意ではない、と。その気持ち、わかる。 昼餉は、公園そばのリストランテで、妻が誕生日を祝ってくれる。ワインを飲んで、パスタ、サラダ、スープ、ドルチェ、ケーキ。2時間ほど飲んで食べて、話した。 いつもの古書店で本を求める。 ミシェル・シュネーデル著、千葉文夫訳『グレン・グールド 孤独のアリア(原題:Glenn Gould …
・さよなら、愛しい人 著者:レイモンド・チャンドラー、訳:村上春樹 ナレーター:古屋敷悠 出版:早川書房(audible版) 「さよなら、愛しい人」 「さらば愛しき女よ」 …まあでも、 「Farewell,My Lovely」 には勝てませんな。 村上春樹訳では三度目? もちろんオーディオブックでは初めてです。 オーディオブックで聴いて、 「いやぁ、この描写や表現はスゴいわ」 と改めて感心させられるのは、黙読時には読み飛ばしてるからなんでしょうね、やっぱりw。 しかしまあスゴいもんはスゴい。 chatGPTなんかの生成AIでも、ラノベ的な物語創作はできるような気がするんですが、ここまで至るのは…
『そして夜は甦る』 原尞 ハヤカワ・ポケット・ミステリ 「清水俊二氏、双葉十三郎氏、稲葉明雄氏、田中小実昌氏の生前の訳業に感謝す」というラストの献辞が泣かせる、チャンドラー臭芬々というかフィリップ・マーロウ臭芬々というか、そういう物語。