松江の夜、寂々 ♬関の五本松 一本伐りゃ 四本~♬ と綺麗なおねいさんが歌う。「ちょっと待って貰わねばならん」と百閒が口を出す。「五つあるものを一本伐れば当然四本だ、算術上決まっている、言うまでもない。」 ♬あとは伐られぬ、夫婦松~♬ 「おかしな話じゃないか、四本が二夫婦だというのかい、そうとばかりは限らんぞ、野郎松ばかりが四本突っ立っているかもしれないし、かみさん松が四本かもしれない、一本だけが雄松で一夫多妻、逆に一妻多夫かも知れん、それにさ、構わないから四本とも伐っちまえ」・・・こんなだから百閒は菅田庵(不昧公の茶室)の狐に取付かれるのだナ。 松江の夜を百閒はかくの如くにして、綺麗なおねい…