近代文学研究者。元[[日本大学]]教授。
1940年2月3日、生まれ。2016年6月19日、死去。 静岡県出身。 東京大学経済学部を卒業。卒業後2年間サラリーマン、それから文芸評論などを書き出し、 日本大学芸術学部で初めて大学の教壇に立つ。最初に教えたのは語学、次いで文芸関係。 約10年後、文理学部国文学科の専任教員になる。専門分野は近現代文学で、とくに文学史論や現代の作家・作品論。
伝記伊藤整―詩人の肖像 (1977年)
大学で読む現代の文学
『変態心理』と中村古峡―大正文化への新視角
「組織のようなものにしばられたくない」と若い人たちがどんどん表明しだしたのは、大学での学生運動が下火になりつつあった1970年代後半以降だろう。1980年代は「政治の季節」が去って、個人主義・消費社会へ…と総括されることがあり、そういう単純な総括自体には違和感はあるけども、組織や社会との対立という形で個人の尊厳を重んじる感覚が社会や新しい世代に本格的に根づき始めたとは言えるだろう。 「今日ではほとんど常識」 伊藤整が「組織と人間——人間の自由について」と題して講演し、組織と人間を対立の構図のうちにとらえて、人間=個人の側からの絶望的とも思える抗議をしたのが本評論である。『小説の認識』の中に収め…
2024年3月27日(水) 今日と明日の2日間休みをとって京都へ行く。 午前9時の新幹線に乗る。窓際の席を選んだが、隣は空席だったので気兼ねなくトイレにも立てるので快適。 車内の読書用に持ってきたのは森見登美彦「シャーロック・ホームズの凱旋」(中央公論新社)。舞台がヴィクトリア朝京都という設定となれば、今日の読書に丁度いい。ホームズ、ワトソン、モリアーティ、レストレード警部となじみの名前が何故か京都の地名の中で生き、行動している不思議。ホームズの下宿は寺町通221Bにある。 昼前に京都駅着。買った本を持ち帰る用の大きなボストンバックを駅のロッカーに預ける。インバウンドで溢れる駅のロッカーは使用…
2006年11月20日発行 巻末の曾根博義の解説によると、本作は『論語』がどのようにして成立したのかその成立過程を想像力を駆使して描いた小説だという。井上靖は様々な人間関係のなかで師弟関係がいちばん好ましいと考えていた。弟子が亡き師について語るという形式は70代で書かれた『本覺坊遺文』と同じ形式だが、本作は孔子研究会の会員たちと蔫薑との質疑応答という形式をとることで立体的になり、蔫薑の物語としての『孔子』は乱世のなかで国を失った人間が、師の言葉を思い起しながら、人間として何が重要なのかを考え、世の平和を希うという物語であるとのことである。 孔子の思想のまん中に坐っている“仁”というものは、いか…