中村彰彦氏は直木賞も受賞している歴史小説家である。ということを、私は本書を手にするまで知らなかった。明治維新の裏で、いろいろな陰謀や画策があったという話はよく聞く。孝明天皇が若くして逝去した裏にも何かあったのではないか。明治以降の時代背景もあり、表向きには痘瘡による病死ということになっているが、これについても早くから毒殺説が囁かれてきた。 筆者は早くから毒殺説を疑っていたようだが、医学博士橋本博雄氏の論文発表を受けて、さらに推測を進め、岩倉具視を黒幕に、妹で女官だった堀河紀子を通じて、女官トップの大典侍にして、孝明天皇への不満を募らせていた中山忠能の大叔母に当たる中山績子が毒を持ったのではない…