ユダヤ人の作家アイザック・バシェヴィス・シンガーの小説『ルブリンの魔術師』(大崎ふみ子訳、吉夏社、2000年)を読んだ。 作品全体は非常にリアリスティックな書き方なのだが、それを極端につきつめたためにかえって非現実的な感じのする、独自の作風の作品だ。 リアルでありながら非現実的な『ルブリンの魔術師』 シンガーのことをご存じない方が多いとおもうので、簡単に彼のプロフィールを紹介すると、1904年(一説では1903年)にワルシャワ近郊に生まれ、ポーランドで育ち、1935年に渡米してジャーナリストとして活動するかたわら、小説を発表し続けた。彼の作品は一貫してポーランドのユダヤ人が使っていたイディッシ…