序文・埋め立てられた大池 堀口尚次 過日所用で名古屋市中区の地下鉄上前津(かみまえづ)駅を下車した際、千代田2丁目の福恩寺に立ち寄った。真宗大谷派のこじんまりした寺院だが、本堂は閉ざされていた。境内に真っ二つに切断された跡のある石碑があり、読み取りにくいが、私は「南無阿弥陀佛」と彫ってある様に思えた。その字体は、独特の字体で有名な徳本(とくほん)行者〈念仏聖〉のものと少し似ていて私の好奇心を駆り立てた。 そして閉ざされた本堂の大扉に向かって合掌していると、「ギギギー」と大扉が開いてお寺の奥様とみられる女性が現れた。私はご挨拶し先程の石碑について徳本行者との関連性を訪ねるも不明とのことだった。し…