「銀河鉄道の父」という映画(2022)を観た。原作は門井慶喜の同名の直木賞受賞作で、宮澤賢治の生涯を父政次郎の視点から描いたもので、私は政次郎が死ぬまでが書いてあるのかと思っていたから、原作には不満が残ったが、映画は良かった。特に妹のトシを演じた森七菜が、美人でない分リアリティがあってよかった。 ところで宮澤賢治といえば、長いこと私は批判的、ないしバカにしてきた。もちろん、吉田司の『宮澤賢治殺人事件』(1997)と、荒川洋治の『坑夫トッチルは電気を灯けた」(1994)の影響で、前者は『批評空間』で柄谷行人が吉田を呼んでさんざん賢治をバカにしていたから影響も受けたし、あとで『現代文学論争』にも書…