S・S・ヴァン・ダイン『僧正殺人事件』(創元推理文庫) エドガー・アラン・ポー『ポー傑作選1 黒猫』(角川文庫) ウンベルト・エーコ『薔薇の名前』(東京創元社) S・S・ヴァン・ダイン『僧正殺人事件』(創元推理文庫) 「そんなはずはない」ヴァンスは自分に言い聞かせるかのように言った。「あまりに途方もない。残忍すぎるし、どこまでもゆがみすぎてる。血塗られたおとぎ話――歪像の世界――あらゆる合理性の倒錯……。考えられない。意味をなさない。黒魔術や妖術やまじないみたいだ。まったく、正気の沙汰とは思えない」 ヴァン・ダインの名に、古色蒼然としたものを感じ取るようになったのはいつからだろうか? その作品…