目を覚ますと外が明るい。向かいに建設中のマンションの、重機の乱雑なリズム。気だるく、掃除や皿洗いなどをしていると4時くらいになってしまう。思い立って早稲田へ出かける。 都電荒川線に王子から乗り込む。休日・平日問わず、そのキャパシティの少なさと、住宅街を通り抜けるからか、常にごった返している。窓際に立っ講談社文庫の堀江敏幸『熊の敷石』を読み始める。横に立った女性の顔の輪郭が、文庫本の紙面に投影され、鼻先や、くちびるの形などが読み取れる。本は全く読めなかったけれど、他人のそうした身体性が影とはいえ目の前に差し出されるのは久しぶりで、はっと新鮮な気持ちになる。 面影橋で降り、書店の通りまで歩く。浅川…