英文学者、一橋大学教授。1966年?山口県生まれ。山口県立宇部高校卒。1989年東大文学部英文科卒。92年同大学院人文科学研究科修士課程修了。1996年オックスフォード大学英文学部博士課程修了、博士号取得。1996年帝京大学文学部専任講師、2002年一橋大学言語社会研究科助教授、07年准教授、2009年教授。専門領域は、モダニズム期の英文学(特にジョウゼフ・コンラッド)、20世紀後半以降の英語文学、ポストコロニアル批評。
新聞の土曜の書評欄で『エドワード・サイード ある批評家の残響』が紹介されていた。執筆者は中井亜佐子さんという一橋大の英文学者。僕も英米文学研究の端くれ?ですが、名前は知っていました。 その書評に「パレスチナに生まれアメリカに亡命し、『オリエンタリズム』やパレスチナ関係の著作を残したサイード」とあって、そこに少し疑問を感じたのでした。 どこに。僕の記憶ではイスラエルに生まれたアラブ系の人であった。あとからパレスチナ系アメリカ人の文学批評家と自分の中では修正された。 でもこれも不正確だった。この不正確な知識は、自分のせいでもあるけれど、中東の歴史の複雑さの故でもある。 Wikiでは「キリスト教徒の…
毎週日曜日は、この一週間(3/18~3/24)に週刊誌や新聞などの書評に取り上げられた旬の本を紹介しています。書評内容については各誌・HPなどをご覧ください。 今週の書評本 *表示凡例◆掲載された媒体: 発行号数 掲載冊数書籍タイトル 著者.編者 出版社 税込価格 書評掲載回数(②回以上を表示) ◆サンデー毎日「遠回りの読書」: 3/31 号 2 冊路上のセンス・オブ・ワンダーと遥かなるそこらへんの旅 宮田珠己 亜紀書房 2,200 ②雑草学のセンセイは「みちくさ研究家」 稲垣栄洋 中央公論新社 1,650 ② ◆女性自身「今週の本」: 4/2 号 4 冊そして誰かがいなくなる 下村敦史 中央…
『オリエンタリズム』の批評家サイードについて 中井亜佐子は英文学、特にコンラッドをはじめとしたモダニズム期のものを専門とする研究者で、以前も当ブログで著書を紹介したことがある。 pikabia.hatenablog.com 今回紹介するのは、上記『〈わたしたち〉の到来』においても主要な参照項となっていた批評家、エドワード・サイードに関するものだ。 エドワード・サイード ある批評家の残響 作者:中井亜佐子 書肆侃侃房 Amazon エドワード・サイードはパレスチナ人としてイスラエルに生まれ、後にアメリカ合衆国に移住した批評家である。西欧において語られるアジアのイメージを批判的に論じた代表作『オリ…
昨日は職場の主催のシンポジウムで帝国主義・植民地主義をめぐる5時間+懇親会。大変に濃密でした。 その中で、中井亜佐子さんが『闇の奥』と採取/採掘主義(extractivism)についてお話をされていて、最近考えていたことにとても強く響いたのでメモ。 中井さんの議論をここに正確に再構成はできない/しないですが、お話を伺いながら、最近ナンシー・フレイザーの最新刊などを読みながら考えてきたことがすっきり整理されたような気がしました(気のせいでなければいいですが)。 採取/採掘主義というのは、大まかに整理してしまうと、マルクス主義的な「搾取(exploitation)」に対する、原初的蓄積が現在も進行…
2/11(日)18:30-20:00「いまエドワード・サイードを読むということ」(登壇者:中井亜佐子、河野真太郎) 本と珈琲の店 UNITÉ(東京都三鷹市)https://unite-books.shop/items/65af3c0bd2ff8f003d4c8477 エドワード・サイード ある批評家の残響 作者:中井亜佐子 書肆侃侃房 Amazon ジェンダーにおける「承認」と「再分配」: 格差、文化、イスラーム 作者:博美, 越智,真太郎, 河野 彩流社 Amazon この自由な世界と私たちの帰る場所 作者:河野 真太郎 青土社 Amazon 暗い世界 堀之内出版 Amazon
私事で恐縮ですが…… SFのテーマとしての植民地 シンガポールで見る007の衝撃 創作紹介 関連ブックガイド 私事で恐縮ですが…… Winsland House II 今回は私事と雑談なんですが、実は一昨年あたりからブログのほかに趣味でSF小説を書いておりまして、WEBメディアのコンテストに応募したりしています。 昨年はバゴプラ/Kaguya Planet主催の「第3回かぐやSFコンテスト(特集・未来のスポーツ)」 にて選外佳作に選んでいただいたりもし、細々と楽しく活動しております。 Kaguya Planetについてはこちらの記事をどうぞ。作品へのリンクもあります。 pikabia.hate…
吐き気と痛みで気持ち悪かったので、葛根湯を飲んでたくさん寝た数日だった。何度も寝て、何度も今日を分ける。体調が悪くなってやっとからだの後ろ側をこわばらせている癖に気づく。数日鏡を見なかった気がする。優先順位のすごく高いものだけに集中した数日で、狭い穴を潜り抜けるような気分だった。そのあいだにいろいろな連絡がくる。受けるのを続けるなかで自分から連絡をとる力がなくなっていくのがパターンだと思う。自分の体の周りに資料がたくさんあり、ものごとが進んでいる。 はじめての段取り、読めなさがあって気がかりや不安がある。それでもやること、やるべきと思うことは同じで、もっと早く向き合えばよかったと思うのも同じ。…
さて月も明けまして恒例の新刊チェックです。この記事のために見かけた書名を控えておくのですが、いざこれを書こうとすると発売が延期になっていることもしばしば。みなさま苦労して本を刊行されているのかと思います。面白い本をどんどん出してくれる著者翻訳者出版社のみなさまに感謝しつつ1月の気になる新刊を見てみましょう。 ミヒャエル・コールハース チリの地震 他一篇 (岩波文庫 赤416-6) 作者:クライスト 岩波書店 Amazon 「チリの地震」が有名な19世紀ドイツの作家クライストの新訳短編集が岩波文庫より。訳者は他にベンヤミン、カール・クラウスなど手掛け、『映画に学ぶドイツ語』『現代メディア哲学 複…
エドワード・サイード ある批評家の残響 作者:中井亜佐子 書肆侃侃房 Amazon 著者とのトークイベントが控えているので、詳しくはその時に話したいとは思いますが、一周目を読了して、これは早く多くの人にお勧めしたくてちょっと書いておきます。 没後20年のサイード。パレスチナ情勢が野蛮なことになっている今、再び亡霊のようにその名が人びとの口にのぼるサイード。私も「サイードが存命だったら何を言っただろうか」と考えたことは確かです。 本書はそのサイードを「批評家」として読みます。これは当たり前というかトートロジーで、サイードはずっと批評家だったのですが、おそらく改めて確認されなければならないのは「批…
オレにしてはめずらしくちゃんと最後まで読んだ 『日常の読書学』中井亜佐子 コンラッド『闇の奥』の読解をつうじて読書と批評と外の世界 そのもの について考えて最終的に日常的に我々(のうちの読書が好きな者)がしている ことはどういうことかを考えるのことである どうしてもウルフであるとか意識の流れ 文学のそれまでのそれがうまれたときとそのあとの変化 つまり「特定の人間が行うこと」(たとえば騎士) から 「普通の人が行うこと」たとえばディケンズの小説での孤児とか 英国の「つとめ人」の生活など 普通の人がしていることを普通の生活のありかたを書く しかしそれを書くことで読んだ人間はその「普通」の中に新たな…
もちろん面白そうな予感があるから借りるのである 中井亜佐子『日常の読書学』 はコンラッド『闇の奥』をテクストとして採用して精読し 批評ししゃぶりつくす行為をつうじて日常の読書(この用語はヴァージニア・ウルフの「ふつうの読者」(評論集)の中でのふつうの人のふつうのOrdinaryな読書からきている)とはとかそれと精読・批評はどうつながっているのかという つまり 「読書」という行為そのものについて考えたい人が書いた本である 英語文學の専門家で教授の人の書いた本であるからして 分かった上で一般読者が読めるように工夫してあると いう呈ではないかと思う 思うけどさらにそこには『闇の奥』の面白さをもっと知…
船乗り作家による、時代を超えた小説 闇の奥(新潮文庫) 作者:ジョゼフ・コンラッド 新潮社 Amazon ジョゼフ・コンラッドの『闇の奥』は1899年にイギリスで発表された小説で、近代文学の名作と名高く、またポストモダン文学の先駆とも言われる、時代を越えて読まれている本だ。ちなみに近代文学の名作としては珍しく中編で(だいたい長いイメージないですか?)、文庫本で200ページ程度とコンパクトな作品なのも魅力だ。 作者のコンラッドは1857年に当時ロシア領だったポーランドのベルディチェフ(現在はウクライナ)で生まれ、いろいろあって両親を亡くした後に16歳で船乗りとなり、商船で世界を巡る航海の日々を2…
6月4日(日)午後1〜6時 吉村元希、中村侑子、滝野瀬あゆか ほか 中井亜佐子、佐藤元状、田尻芳樹、松永典子、河野真太郎、星野真志、小川公代 ヴァージニア・ウルフ『ダロウェイ夫人』を読む 東大駒場キャンパス18号館1階ホール docs.google.com ダロウェイ夫人 (集英社文庫) 作者:ヴァージニア・ウルフ 集英社 Amazon ダロウェイ夫人 (ヴァージニア・ウルフ・コレクション) 作者:ヴァージニア ウルフ みすず書房 Amazon かわいいウルフ 作者:小澤 みゆき 亜紀書房 Amazon エアスイミング 作者:ジョーンズ,シャーロット 幻戯書房 Amazon ダロウェイ夫人 (…