390.『道草』先行作品(5)――『満韓ところどころ』 ・第2集『満韓ところどころ』 明治42年10月~12月『永日小品』以外に明治42年にはもう1つ、『満韓ところどころ』(全51回)という未完の紀行文集がある。『永日小品』は新春に書かれたが、『満韓ところどころ』は漱石の好きな秋の話である。 漱石は明治42年9月~10月の1ヶ月半、(英国留学を除けば)最も長くて遠い満洲朝鮮の旅に出かけた。帰国早々同じハルピン停車場で伊藤博文が撃たれたが、二つながらに中村是公が立ち会っていた偶然にもめげず、(疑り深い漱石であれば、背恰好の似た自分が何かの練習台に使われたのではないかと不安に感じてしかるべきところ…