(本書の種を割っていますので、ご注意ください。) 『死仮面』は、横溝正史の戦後作品のなかで、長い間「幻の長編」だった。 中島河太郎が1975年に作成した作品目録には、昭和24年(1949年)8月から11月まで『物語』という雑誌に連載されたことが記されていたが[i]、その小説は刊行された記録がなかったし、長編であるかどうかさえわからなかった。 それが突然「カドカワノベルズ」の一冊として出版されたのは1982年のことで、詳しい経緯は、本作を発掘した中島河太郎執筆の「『死仮面』おぼえがき」で語られている。 実際に連載されたのは昭和24年5月から12月で、雑誌『物語』は名古屋の中部日本新聞社の発行だっ…