もし、あの時、匈奴の君主・冒頓(ぼくとつ)が、漢の初代皇帝・劉邦(りゅうほう)を殺していたら―― 中国大陸の運命だけでなく―― ユーラシア大草原の運命も、大きく変わっていたかもしれぬ。 冒頓は大軍を率いて一気に南下―― 漢の都・長安を攻め落とし、そのまま―― 後世、モンゴルが、そうしたように―― 中国大陸を自身の版図に組み込んだかもしれぬ。 もし、冒頓が、ユーラシア大草原の東部と中国大陸の全域とを押さえたなら―― 以後、その目は西方へ向けられたろう。 冒頓の視線の先には、遠く、ロシア平原が横たわっていたに違いない。 モンゴル高原から中国大陸までの距離は、ざっと 1,000 キロメートル―― モ…