ヌルハチの対明関係とその展開過程について ――主として朝貢活動から見た――は じ め に ヌルハチが建州女直を統一した万暦一六年(1588)以降、同四三年(1615)までのおよそ二八年間 に、計三〇次にもわたって明王朝に朝貢を繰り返したことは、『明実録』をはじめとする明側史料 に徴して隠れもない事実である。万暦一六年以後、後金国の建国と明王朝からの独立が宣言される 万暦四四年まで、ヌルハチの対明関係はいくつかの段階を経過して変化したと考えられる。その間 の紆余曲折を知るためには、対明関係を如実に反映するであろう朝貢のありかた、就中その断続性 の分析が有効な視角を提供する。 にもかかわらず、従来…