東京大学文学部卒業。早稲田大学名誉教授。
アイヌ語を主に、バスク語などを研究した言語学者。
昭和48年(1973)、『「アイヌ語沙流方言の人称の種類」ほか一連のアイヌ語研究に対して』により金田一京助博士記念賞を受賞している。
金田一京助の名が出たついてに、言う。この人が明治末年、アイヌ語研究を志したときは、同学の士がおらず、孤独だった。
が晩年は、にぎやかになった。この人は『私の歩いて来た道』のなかでよろこび、とくに女性の研究者のことがふれられている。
前記の田村すず子教授(早稲田大学語学教育研究所)が“福田スズさん”として登場している。金田一京助は、この人について、東大の言語学科を出て「まっすぐにアイヌ語の文法研究へ進んだのです」と言い、
「きれいな人ですが、女の身一人で宗谷のアイヌ部落の中にはいって、研究するという、勇敢さです」
現在形になっているが、話されているのは昭和四十年前後のことかと思われる。私などは、田村すず子教授は、ヨーロッパの稀少語のバスク語の研究者としてその名を知っているが、このひとのアイヌ語研究については無知だった。
司馬遼太郎 『オホーツク街道』(「街道をゆく」38)
The Ainu Language (ICHEL Linguistic Studies)