(さらに昨日の続き)。 古来、日本の天皇は政治的権力者というより、この国の祭祀の要に位置しており、この国の祭祀の根幹は、古代の巫女が、自分の存在を打ち捨てる覚悟で神に仕えることで、その身に神を憑依し、神そのものになって人々に恵みをもたらし災難から守護するために祈るところにあった。 しかし、8世紀の律令体制によって、そうした古来の巫の影響力は弱められ、国家鎮護の祈りは、仏教によって執り行われることになった。 また、古代の巫の祈りは歌人に継承されていたが、例えば挽歌のように人の死に際して本気で魂を招魂しようとする歌は、持統天皇に仕えた柿本人麿を頂点として終焉し、その後は次第に世俗的な世界の中で、個…