神聖ローマ帝国。 全フランクの王、シャルルマーニュが西暦800年にローマで戴冠したことを原初とし、以後1,000年にわたり西欧に君臨し続けた巨大なる帝国。 ローマでありながらローマでなく、統一国家ですらなく、神聖ですらなかった中世の遺物、異形の怪物は、1648年のヴェストファーレン条約により「死亡診断」され、1806年にフランス皇帝ナポレオン1世によって荼毘に付された。 ある意味で、その死をもって近世を終わらせ、近代の扉を開いた画期となる出来事だったのかも知れない。 だが、その死を決して認めない勢力もいた。 19世紀前半。その「死」からまだ数十年の時を経たばかりのこの時代に、ハプスブルク家の栄…