出版界と図書館界の20年論争中に、本の売行きが落ちたのは公立図書館の貸出数が増えたせいだと主張する人たちがいました。いくつか例を挙げてみましょう。 例1: 2000年4月、『新文化』という出版業界紙に、能勢仁(のせ・まさし)氏による「増加一途の図書館貸出冊数:書籍販売の伸びおびやかす一要因」という記事が掲載されました。能勢氏は、書店、出版社、出版取次店で経験を積み、1995年に独立して出版と書店のコンサルタント会社「ノセ事務所」を立ち上げた方です。 上記の記事に次のようなくだりがあります。 「書籍販売冊数の減少率はこの三年間で、2.6%~7.1%である。この反対の増加現象が公共図書館の貸出冊数…