本書は、1995年の乱歩賞&直木賞を同時受賞した藤原伊織の作品。同作者の別作品によるW受賞はあるものの、同一作品としては史上初のものである。作者は本書の主人公たちと同じ東大仏文科卒、電通勤務時代に「踊りつかれて」(1977年)と「ダックスフントのワープ」(1985年)で各賞受賞したが、その後は目立った作品はない。ギャンブルで借金を背負い賞金1,000万円を狙って書いた本書で、W受賞を果たす。 解説にもあるように主人公の造形・文章の確かさ・構成の妙などに優れ、乱歩賞選考員を魅了しての受賞となった。その才能で将来を嘱望されたものの、2007年に59歳で亡くなるまでに本書を越える作品は産み出せなかっ…