伊藤海彦『旋律と風景』(国文社 1982年) 伊藤海彦の音楽エッセイ。33の楽曲について、その旋律と分かちがたく繋がっている思い出の風景を綴ったもので、クラシック曲もあれば、タンゴ、シャンソンもあり、東京音頭や尺八曲、大薩摩節という三味線音楽まで入っています。各章のタイトルに楽曲名をつけ、体裁は音楽を起点として文章を綴っているように見せかけてはいますが、実際は、音楽をダシにした一種の青春回想録となっています。読んでいるあいだ心地よい時間を過ごすことができました。 ひところ、よく読んでいた回顧的な音楽エッセイに連なるものがあります。松井邦雄や塚本邦雄、久世光彦など、みんな私より一世代上の人たちで…