スペイン文化に造詣が深く現代日本語圏におけるギュスターヴ・ドレの伝道者ともいえる谷口江里也によるギュスターヴ・ドレへの手紙形式の散文頌歌。ドレが五歳の時に描いた『ラ・フォンテーヌの寓話』のなかの「アリとキリギリス(セミ)」の最初期の絵からはじまり、51歳で亡くなるまでに物した膨大且つ繊細な業績の数々を、基本的には年代を追いながら跡づけていく、愛にあふれる書物。 142点の鮮明なドレの木口木版画の図版とともに写真などの新しい複製技術が発達しながら大衆消費社会が爆発的に広がっていった時代の寵児たる芸術家の姿を描きだしているところは注目に値する。 描きすぎて場面を構成する人物や取るにたらない事物まで…