*1● 小説家が儲かった時代、というのがある。いや、あった、と過去形にした方が、すでによくなっているのかもしれないのだが。 売文渡世として書きものを換金できるようになる。それが持続して「食えるようになる」というだけでなく、まさに一攫千金、常ならぬ稼ぎを「一発当てる」ことのできる投機的な仕事、まさにそういう「商売」「稼業」として想定できるようになってゆく、そんな過程がかつて同時代の歴史的体験としてあり得た。つまり、市場の拡がりをあらかじめ意識の視野に収めながら、創作としての「おはなし」をこさえてゆく、そんな作業が「文学」の間尺にも入り込んでくるようになったということでもあった。その結果、何らかも…