毎日新聞の書評欄の「なつかしい1冊」のコラムに石山蓮華(俳優)が田辺聖子の『苺をつぶしながら』(講談社文庫)を挙げている(2024年1月6日朝刊)。 私が発する「いちご」のイントネーションは変わっているらしい。この小説のタイトルを口にしようとすると、私はちょっと緊張し、一拍考えてしまう。 一般的に関東では「ぶどう」と同じ平板のイントネーションで発音するが、物心ついた頃から「秩父」と同じ頭の上がるイントネーションが普通なのだと思っていた。指摘されるまで、人とのずれに気が付かないことはよくある。なかでも、話した途端に消えるイントネーションは、その瞬間に掴んでわざわざ確認しないとまず気付けない。 私…