394.『道草』先行作品(9)――『硝子戸の中』 ・第4集『硝子戸の中』 大正4年1月~2月 前作『思い出す事など』から丸4年。作物のなかった「死の明治44年」から4年経過した大正4年、漱石4冊目の随想集はまた、最後の随想集ともなった。毎年繰り返す大病とカムバックに、何か思うところがあったのだろうか。『満韓ところどころ』『思い出す事など』は書いた目的が限定的ではっきりしていた。『硝子戸の中』は何のために書かれたか。何が残された時間の少ない漱石に、こんな「閑文字」を書かせたのか。同じ年に『道草』が書かれたことだけは動かしようのない事実であるが。1回「硝子戸の内」 多事の世の中に敢て閑文字を並べる…