非常に意外な感がする。 まさか天下の『時事新報』に、「キチガイ地獄外道祭文」を発見するとは。 不意打ちもいいとこ、予想だにせぬ遭遇だった。 明治二十年三月三日の記事である、 「西洋諸国にては遺産相続の際などに、一方の窺覦(きゆ)者が他の相続人を癲狂者なりと言ひふらし、医師に嘱して其の癲狂者なりとの診断書を作らしめ、斯くて無理に入檻させ置くその中に、遂に真の癲狂病に罹るの事例少なからず。弊害の容易ならざるものと言ふ可し」 どうであろう、チャカポコチャカポコの不吉なリズムが鼓膜を打ちはしないだろうか。 いや、絶対に打つ。日本三大奇書が一、『ドグラ・マグラ』を読んだ者なら必ず幻聴に見舞われる。筆者に…