福翁自伝 (講談社学術文庫)作者:福沢 諭吉,土橋 俊一講談社Amazon 裸体の事について奇談がある。 ある夏の夕方、私ども五、六名の中に飲む酒が出来た。すると一人の思いつきに、この酒をあの高い物干の上で飲みたいというに、全会一致で、サア屋根づたいに持ち出そうとしたところが、物干の上に下婢が三、四人涼んでいる。これは困った、あそこで飲むと、彼奴等が奥に行って何かしゃべるに違いない、邪魔な奴じゃなといううちに、長州生に松岡勇記という男がある。至極元気のよい活潑な男で、この松岡のいうに、僕が見事にあの女どもを物干から送っ払ってみせようといいながら、真裸体で一人ツカツカ物干に出て行き、「お松どんお…