序文・天皇も見た絵 堀口尚次 蠣崎波響(かきざきはきょう)/蠣崎広年は、江戸時代後期の画家、松前藩家老。松前藩12代藩主・松前資広(すけひろ)の五男に生まれる。 波響が生まれた翌年に父が亡くなり、兄の道広が藩主を継いだ。翌年に波響は、家禄五百石で藩主一門寄合の蠣崎家の蠣崎広武の養子となった。幼い頃から画を好み、8歳の頃馬場で馬術の練習を見て、馬の駆ける様を描いて人々を驚かせたと伝わる。叔父で松前藩家老の広長は波響の才能を惜しんで、安永2年に江戸に上がらせ、南(なん)蘋(びん)派の画家の建部綾足(たけべあやたり)に学ばせた。江戸は田沼意次の治世下で割と開放的であり、波響もまた江戸の気風によく泳い…