「『惡の華』の歴史。誤解によつて受けた屈辱、訴訟」(ボオドレエル『赤裸の心』) 「私の蒙つた屈辱は神の恩寵であつた」(ボオドレエル『火箭』) 「罪の増すところには恩惠も彌増せり」聖パウロ アルベール・ティボーデは史学と哲学を修めた後に、文芸批評の道に入つた。この『フランス文学史』は1936年に上梓され、1789年から凡そ1930年代迄をその解説の範囲としてゐる。 日本に於る受容について、本書は1952-54年に懸けて翻譯された。名にし負ふ仏文学者、辰野隆氏、鈴木信太郎氏が監修を務め、岩波の『フランス文学案内』を書いた渡辺一夫、鈴木力衛両氏も翻譯に参加してゐる。さうした譯で、我が国に頒布さるフラ…