空港や航空機内、あるいは航空業界に携わる人たちの日常を描いたミステリーは航空ミステリーと呼ばれる。アーサー・ヘイリー「大空港」のような巨編もあれば、トニー・ケンリック「スカイ・ジャック」というハイジャックものも海外では多い。さらにルシアン・ネイハム「シャドー81」やデイル・ブラウンの諸作のように軍事的色彩を強めているものもある。 日本では、このようなジャンルの作品は多くない。専門に描く作家が少ないせいだろうが、1979年発表の本書の作者福本和也は、日本の航空ミステリーの草分け的存在である。太平洋戦争前に空に憧れ甲種予科練を志願するも、飛行訓練中に終戦を迎える。作家デビューしてからも日大理工学部…