Bullitt
刑事ブリットは野心的政治家チャーマースに重要証人の護衛を命じられる。その証人とはマフィアから寝返った男ジョニー・ロス。チャーマース出世への切り札だ。しかし隙を突かれてロスは射殺されてしまう。チャーマースの厳しい叱責を受けるものの、ブリットは事件の背後に切り込んでいく。
スティーヴ・マックィーンの男臭いハードな魅力ならこの1本、と言っても過言ではないハードボイルド映画の名作。実際、マックィーンのファッションから仕草まで、どれも決まっている。覚えるのがイヤで台詞を大幅に削除させた甲斐もあって、口数少ないヒーロー像をクールに演じ切っている。この魅力は現代にも通じるものだ。
しかし映画自体は原作にあった、物語の最後にブリットが謎解きを説明するくだりもバッサリとカットされたせいで、物語が非情に飲み込みにくいものとなった。しかしこの映画の真価は、マックィーンと映画史上初の本格的カーチェイス場面の登場にある。サンフランシスコの坂道を効果的に使ったチェイスは、優れた撮影と編集により迫力ある出来映え。ブリットが乗るマスタングのカッコ良さも伝説的ですらある。
クライマックスの空港での追撃も緊張感たっぷり。ラロ・シフリンのジャズ・スコアも素晴らしい。
内容よりも雰囲気で語られる映画なのである。